緑陰インタビュー 第1回

中森勝之様 ~石仏と出会う楽しみ~

2023年10月8日、中森さんのご自宅でお話を伺いました。

インタビューと撮影 用松・桑久保

 

石仏との出会いはいつ?活動のきっかけは…

学生時代に、石仏じゃなくて、京都と奈良とかお寺にある仏像とかそういうものが見たくて、よく仲間と一緒に夜行列車に乗って京都奈良に行ってたんです。それがベースにあって。

 

 会社に入ってからはもう仕事一本だから、そういうのは全くしなかったんですね。定年になった時に...まぁ少し前から、何か自分の趣味を持ってやらなきゃいけないな、近場で何かやることないかなと考えた時に、やっぱり若い頃の記憶があって。

 

平塚市博物館で「石仏を調べる会」というワーキンググループがあって、広報に会員の募集が載っていた。じゃあ石仏だから、仏像だから一緒だし一度入ってみようということでそれに入りました。

 

 そこに日本石仏協会に入っている先輩がいて、その先輩に紹介されてすぐ石仏協会に入りました。それからもうずーっと続けています。なので会社を退職した後すぐにこの活動に入りだしたんです。

 

中森さんにとっての石仏の楽しみ方、その魅力とは。

石仏って、いろんなものがいっぱい種類があるんですよね。それも同じ庚申塔でも場所によってとか時代によって変わるんです。形が、バラエティが豊富で、なおかつ時代が違ってるから奥行きも違ってくるし。

 

庚申塔だけじゃなくて仏像もたくさんあるし神像もたくさんあるし、とにかくすごく幅が広いですね。飽きがこないっていうのかな。新しいもの、珍しい今まで見てなかったものが見られる。どこかに行くと「あ、これ初めて見た」っていうのがいくらでもあるので、そういうものを探し求めていくのがすごく楽しいですね。終わりがない感じがしますね。

好きな石仏は?と聞かれたら…

庚申塔なら庚申塔ファンっているんだけども、僕はどっちかというとそうじゃなくって、レパートリーが全部好きなの。それぞれにそれぞれの魅力があるから、この石仏っていうんじゃなくて石仏を見ること自身が、全体が好きだと。

 

その行く場所によって風景があったりして「ここが一番いい!」って場所はあるんだけども、この石仏、この神像っていう単体単品的なものじゃなくて複合的に、全部が好き。

 

中森さんお勧め石仏群スポット ベスト3

一番はね、瀬戸内海に尾道からしまなみ海道ってあるでしょう。その途中に因島っていうところがある。その頂上に「白滝山の石仏群」というのがある。これはね、とにかく石仏を見ながらバックに瀬戸内の海、島、それがわーっと見える。石仏そのものも江戸時代の後半なんだけども、すごくいいものがある。そこが一番かな。

 

 

二番めはね、長野県に「修那羅山」と「霊諍山」という民間信仰の、行者が作った石仏群。100体とか150体というものがあるんだけどいわゆる農民的な、地元の人たちが作ったものだからすごく民俗的って言ったらいいのかな、そういう石仏が並んでて非常に面白い。猫神もその中にある。蛇もたぶんいたかな。そういうものがいっぱい並んでるところが見応えがあるかな。

 

三つめは国東かな。国東好きなんだよ。いろんな、仁王から庚申塔からいろんなバラエティーに豊富で。場所もね、山並みや地方のいい雰囲気がすごく出てるところで。

 

その三つかな。「群」という分類で。

 

石仏に興味がある方、これから石仏を知りたい方へのメッセージ

やっぱり、いろんなものを見ることによって自分ががどれが好きかっていうこともだんだんわかってくるし、見ることによって今まで見た石仏とこの石仏の違いとかがだんだんわかってくるから、とにかく数多く見てほしい。

 

そうすると自分の好きなものも出てくるし、それに対する興味もまた倍化してきて、これはまた前と違うからなんで違うんだろう、より奥深く探求しようという気持ちが出てくると思うから、まず足繁く歩いてもらって見てほしいですね。

 

「神奈川狛犬と石仏の会」設立にかける想いとこれから始まる活動への希望を教えてください

いわゆる「日本石仏協会」があるんだけれども、全国組織なのでどうしても東京でやることが多い。参加するのに時間がかかるしお金がかかるしちょっと大変だなっていう人でも、同じ神奈川県だとそんなに交通費かからないし時間的にもちょっと行って帰ってこれる。そういう身近なところで会があると、ちょっと行ってみたいなっていう感じの人たちがいるんじゃないかと。そういう人たちのために近場で会を作りたいということ。

 

それからやっぱり神奈川って非常に石仏のバラエティが豊富なんです。他の県から見ても面白いのがいっぱいあるので、神奈川を見ると全国の縮図的な感じがするんですよ。そういうものをみんなと一緒に楽しめるとすごくいいなと思って。仲間を増やすために、やっぱり欲しいなと思ったからです。

 

一方、僕も今千葉の会と埼玉の会に入っていて、その会に何回か出てるんですよ。というのはやっぱりその地区によって特有のものがある。例えば千葉に行くとね、馬に乗った馬乗り馬頭観音というのがある。これは神奈川県にはいくつもない。また、東京には道祖神って少ないんですね。それが神奈川には多いから神奈川に見に来るとか、そういう地方特有の特徴あるものを見るためには、そこの会に行った方がいい。神奈川の良いものをぜひ見に来てほしいと思っています。

 

「狛犬と石仏の会」名称に込めた想いと変化した視点

僕も狛犬の方と知り合いになって、本当いうと今までは狛犬って同じような形に見えてあんまりゆっくり見なかったんだよ。

 

だけど最近、少しちゃんと見ようと思って見ると、形もそれぞれ違うし表情も違う。やっぱりよく見ると違いがわかってくるという感じがする。今まで石仏については僕は偉そうなこと言ってたけど、狛犬についてはそれをやってなかったからよく見なきゃいけないなって、最近は必ず狛犬を見るようにしてて。

 

昨日もちょっと、神田明神に行ってきたの。神田明神には石仏はないんだけど、もう狛犬がいっぱいあるの!区か都の指定の3匹の狛犬ありますよね。ああ、こんなにあるんだと思って。それを見てぐるーっと回ると、あの境内に狛犬だけで五つか六つくらいありますね。それぞれ年代も江戸時代のものあったし最近のものある。ああずいぶんあるなと思いました。なるべくこれから数見るようにしようと思っています。

 

 

中森さん、今日は素敵なお話をたくさんありがとうございました!!

 

・中森勝之様 プロフィール・

日本石仏協会 前 副会長、現 常任理事

2005年 日本石仏協会入会

同会会誌『日本の石仏』への研究報告の寄稿

月例会「石仏談話室」での講演多数

国内外の石仏見学会での案内講師を務める

2015年「千葉県銚子市の海亀供養塔」『日本の石仏』156号 

2018年 明治大学 生涯学習講座リバティアカデミー「石仏が語る信仰と歴史」講演『庚申塔と庚申信仰』

2023年 「神奈川狛犬と石仏の会」を発足、会長に就任

講演:「私の石仏百選ー珍しい石仏の諸相」「仏足石行脚」「スリランカの仏教遺跡を訪ねる」「天道念仏・天祭の石碑と事例」など多数

::インタビュー後記::

 

実は中森さんは石仏研究だけでなく、マラソンでも素晴らしい実績をお持ちです。フルマラソンの完走をなんと400回も達成していらっしゃると伺ってびっくりしていたのですが、今回中森さんの情熱やストイックさに触れ、この大記録にも納得、と感じました。

 

ちなみに400回目の完走記念ランは2011年の国東マラソン。石仏たちが見守る緑の山道を駆け抜ける中森さんを想像しました。国東半島は用松さんのご出身地で、なんだか石仏が繋いでくれたご縁を感じました。